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ウィリアム・ケイジの生死は、
ある時点を軸にループする。死が想像に易い戦地を、
ケイジは何度も経験する。
誰かの死を、何度も見ながら。
そして己の死に、何度も遭いながら。死にたくないが、死にも切れない。
なぜ、生死を繰り返すのか。
その意味を知れぬまま、
彼は再び死んでは、
同じ場所、同じ時間に戻ってくる。
そんな時、リタに出会う。
「目覚めたら、私を探して!!」純粋に、“守りたい”という気持ちが、
次への一歩を踏みださせる。
もしかしたら今度こそ、
新しい未来がはじまるかもしれないから。その先に、僕と君とが、いなくても。二重の観念がある。ゲームみたいに命にチープな面と、
ひとつひとつの命を尊重する面とを。
でもその、“命にチープな面”も、
よく考えてみれば非常に重たいのだ。
死んでも、生き返る。まるでゲームの中のマリオ

みたい。
私たちはマリオの死に、無頓着だ。
だけど実際自分が、マリオだったとしたら?何度も何度も崖から落ちたり、
敵にぶつかったり、追いかけてくる画面に挟まったり。
精神的に狂うだろうよ。なぜまた死ぬんだ?
そしてなぜまだ戦わなければならない?
それでも再びゲームがスタートすれば、
マリオは走り出さなければならない。
それを身をもって体感することで、
かえって命を軽視しなくなる。
またこの映画は、この間観た、
『
ニューヨーク 冬物語』に重なる。
人が生きていく上で、
どんな運命が待っているのか、
その運命にどんな意味があるのか、
まったくないのか、わからない。
でも、
ただ見過ごされた命、
救えなかった命、
犠牲になった命が、誰かの運命を変えるための、
道を切り開く手段になるのなら。少しも無駄じゃないんだって、思いたいから。
そんな、ゲームのような無機質な設定の中で、
どこか優しさも見え隠れする。
人間ゆえの心の動きが、
繰り返す歴史の中で、
少しずつ学んでいくように。ただの死が、あるべく命とでもいうように。
でも、やっぱり
ひとりひとりにとっては、
それひとつだから、
長い歴史のための犠牲には
なりたくないのが正直な気持ちだよね。
戦争反対!!参戦した、
6月26日のジャパンプレミアで、
すっかり彼の人間性に惚れこんでしまった、
ダグ・リーマン監督!!!映画冒頭から、ダグ監督の
“遊び心”がすごい表れていて、
即行ニヤニヤしてしまった。
だって、異様なブザー音というか、
音響設備の障害??と思うような重低音が流れるんだもん!!
キャーキャー!オープニングでテンション上がっているもんだから、
テンポよく展開していく序盤・中盤には
気分が高揚しまくってしまって、本当に楽しくて楽しくて仕方なかった!!
『
ボン・アイデンティティー』以降は、
彼が関わった映画は一応全部観てるんだなぁ。
そう考えると、まだ作品数は少ない方かもしれないね。
(49歳だし、これからかな。)
『
フェア・ゲーム』から4年経って、
久々の、監督作品が本作。
観た中では、『フェア・ゲーム』は特殊で、
ダグ監督作品のイメージとは違った、社会派作品だった。
それ以外は、エンターテイメント要素の高い、
冴え冴えするようなアクション映画が多い。
そして本作を観て思ったことは、
ダグ監督のアクション、大好物!!ってこと。
続編の話はすっかりお流れ??な『ジャンパー』。
伏線を収集しきれなかった状態で終わってるけど、
でも
映像観は最高にクールだった


ジャンパーたちが瞬間移動する時の、
音響と映像が小気味良すぎる。
映画が公開されてた時から数えると、早6年くらい経ったわけだけど、
延々『ジャンパー』『ジャンパー』言ってるのは
やっぱりその映像観が理由だと思う。
本作では敵(ギタイ)の、ワイヤーのような攻撃(音)、
しかも目で追えないような速さ、
さらにデラデラヂカヂカした特殊効果、
気味が悪くてサイテーでサイコーだった・・・!

とはいえ、実際にそうした特殊効果や
画面編集を担当したのは『ジャンパー』の
特殊効果や編集技術とは別の人なので、
一概に共通性を見出すことはできないのだけれど、
でも
“監督の好み”が、観客のハートをつかんでいるのは間違いない。
「あなたの作品が大好きです!」って、
本人に伝えることができたのが、私の誇り



さて。個人的にかなり注目しているのが、
本作の
重要な映像観を担っている
映像編集。
編集技師
ジェームズ・ハーバートが手掛けてきた作品は、
どれも映像的ツボを突かれている!!
ガイ・リッチー監督作品と親(ちか)しくて、
『
リボルバー』(共作)、『
ロックンローラ』、『
シャーロック・ホームズ』、
『
シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』で編集を担当。
映画の映像はやっぱり監督の采配が大きいけれど、
大まかにまとめ、切り貼りして詰めていくのは、編集技師の作業。
(監督が兼任する場合もあるけどね:『
ゼロ・グラビティ』等)
映画総集編2012で、
映像賞を授与した『~シャドウ・ゲーム』も、
今思えば、
映像の編集力の意味で太鼓判を押したに等しい。
そんなジェームズ・ハーバートは、本作でもやってくれました
“死ぬ”直前までを克明に描いて、
絶妙なタイミングで“生き返る”。何度何度も繰り返しているのに、まったく飽きないのは、
その編集力の絶妙さだと思う。
またこれ、欲しいところに、
登場人物の表情を、パッと映すんだなぁ。
まるで
ロン・ハワード監督作品のように、
セリフのないところで、心情があふれ出す。
本当に良い仕事をしていたよ!!!


彼が
この映画の面白いところを、
一任していたと言っても過言じゃない。
あとこれは、根気よく撮りまくった成果であるとも思う。
何度も何度も同じシーンを観ることになるんだけど、
毎回使う映像が違う。もっと言えば、アングルさえも。
フィルム時代だったら叶わないことだけど、
たくさんたくさん撮りまくって、
たとえそれがNGシーンに繋がったとしても撮りまくって、
最終的に“使える映像”として切り貼りしてしまえば良い。
きっと膨大な映像量だったに違いない。観客にとってはその苦労など想像に及ばないけれど、
毎回違う映像を使うことで、
同じシーンでも毎回新鮮で、
これも飽きのこない要素のひとつだった。
『
バンテージ・ポイント』が毎回挙げる、失敗例。
これ観ると、“別の視点”のはずなのに
同じ映像使いまくることが、どんなに飽きのくることかわかる。
しかし、
キャストもさぞ、大変だっただろう。“今度はこのセリフ、こんな風に言ってみようかな”、
“今度はこんな風に演じてみようかな”が、許されない。
同じ日、同じシーンなのだから、
一切差をつけてはならないのだ。
彼らにも根気が要った。
でもみんなすっごいすっごい
がんばってたんだぁ

よくわからないけれど、本作はやけに、
演じてる人たち全員の懸命な演技に感銘を受けたわ
この特殊スーツがとにかく重そうで。ダグ監督が、着たがらなかった理由だろうね(笑)
40キロもするこのスーツを身につけて、
砂浜を走るシーンは本当に堪えたらしい。
エミリー・ブラントは、そんな時に、
トム・クルーズの熱意と陽気さのおかげで乗り越えられたという。
“トム・クルーズが出演する”ことで、
共演者は糧になり、
スタッフは尽くそうとする。
トム・クルーズの存在感たるや・・・!

トム・クルーズという人間の凄さを知った今、
彼の演ること成すこと、
すべて正解に見えてしまうほどの崇拝具合なのだが、
ウィリアム・ケイジというキャラクターが、
“目に見えて”強くなっていくのを
トムが見事演じきっていて、感激だった


『
マトリックス』のネオ(
キアヌ・リーヴス)みたいで、
当初は人里に現れてビクビクする野ウサギが、
空高くから俯瞰する鷹のように成っていく。
でもキアヌが演じたそれよりももっと深みがあって、
見た目はもっと若く見えるけど、
これが
51歳の貫録か!!と納得。
表情が全然違う!!
体の動かし方さえも違う!!
それにしても、映画冒頭(野ウサギの頃)の方が老けて見えて、
後半(鷹)に向かうにつれて、目に力が入って、肌にツヤが出て、
若返っていくトムが不思議だったな。あの人どうなってるの。
自分ばっかりが思いを重ねていくために、
リタを見つめる瞳に、
ものすごい感情を預けてきて、
観ているこっちは頭爆発しそうだった!!!


トムが演じる役は、トムが恋しても、
相手の女性が先に恋しているか、同時進行かだけど、
本作は完全にトムが先立ってるので、
こんな素敵な映画があっていいのですかと問いたくなった

エミリー・ブラントは、この映画のために体を絞りに絞っていた。
『
アジャストメント』でダンサーの役を演じてた時、
「その割には二の腕が・・・!」と余計なお世話な発言をした私だけど、
今回は凄まじいハードワークをこなしたようで、
ものすごくスタイルがよくて、カッコよすぎた!!


彼女を観るたび観るたび好感度が高まってく!!!
濡れた声とイギリス英語が本当に素敵で、
彼女の演技力もあってこそ、
この映画のリアリティだったなって思う。

リタとケイジの心の動かし方はとても自然で、
その上、
トムとエミリーの相性が抜群で、
うっとりしてしまった


もし2人がトムとエミリーが互いに結婚していなかったら、
『ジャンパー』や『
Mr.&Mrs.スミス』(諦め←)のように、
素敵なカップルが生まれていたかもしれないね

(トムは今バツ3でフリー。)
その他、出演者もよかった!
ビル・パクストンが最近良い感じのところに出てくるね!!!

デンゼル・ワシントンと
マーク・ウォールバーグ共演の
『
2ガンズ』でも素晴らしい悪役として登場するけど、
ビル(下写真右)のように優しい顔とは対照的な性格を演じると面白い!



隣のグリフ役
キック・ガリーっていう俳優さんも、なんかかわいかったな。
ウォシャウスキー兄弟の『
スピード・レーサー』観ようかなぁ。
モーリッツ・ブライプトロイも出演しているんだよね??
ブレンダン・グリーソンの出演も嬉しかったなぁ!
軍人の割にはアレな体系だけど、
前線離れればこんなもんかな・・・??

トムが小さいこともあるけど、ブレンダンの190センチ近い身長は
ものすごく威圧感があって、彼も優しい顔つきだけど、
ちょっと恐い役を演じたりすると面白い

太っちょのキンメルを演じた、
トニー・ウェイって、
エドガー・ライト監督、
サイモン・ペッグ、
ニック・フロスト出演の、
ドラマ『
SPACED』に出てた少年だよね???
この映画は、私はまだ原作を読んでいないために判然としないけれど、
やっぱり原作ありきの作品だよね?(と思いたい。)
とはいえ、映画の原題は、
あえて原作通り『
All You Need Is Kill』にしなかったのは、
原作に着想を得て、別物にしてます、という感じなのかな。
映画化においては、原作者も“原作を読みこんで解釈している”と
納得している内容のようだけどね。
いずれにしても、
すっごいうまい脚色だった!!!
それだけはわかる!原作を読んでいなくても!!
きっと、原作ではもっともっと描かれていた部分も、
映像化するにあたっていろんな要素を削除しなければならなかったと思う。
ただ、そのチョイスが非常に上手かったし、
ラスト含めて
セリフ以上に物語る“余韻”が素晴らしかったし、
これはジェームズ・ハーバートの編集力にもかかわる部分だけど、
ループ的な展開を時にはしつこいくらい繰り返して、
ケイジにかかる精神的な苦痛を表して、
しかしある程度のところまでいったら、
(既に何度も経験しているのに)観客には初めての展開を見せるとかして、
脚本としても、飽きさせない工夫が凝らされていた。
時間の積み重ねを、トムの演技だけで見せることだってできる。
その、重要要素の、切り捨ての上手さが、
これだけのテンポを生んだし、
かといえばけして“語られないすぎない”難しさもないから、
脳には非常に気持ち良い、頭の使わせ方だった!

で、その脚本を務めたのが、
『
ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー賞脚本賞を受賞した、
クリストファー・マッカリー。
トム・クルーズとは『
ワルキューレ』以来親(ちか)しい感じで、
『
ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』や
『
アウトロー』でも脚本を執筆。
『ミッション:インポッシブル』の5作目も手掛ける予定なんだね!
そして
ジェズ・バターワース、
ジョン=ヘンリー・バターワースの2人も、
本作で脚本担当として名を連ねている。
ダグ監督の『フェア・ゲーム』でも手掛けている2人で、
きっと監督にその腕を認められての再起用なんだろうな!

音楽は、
クリストフ・ベック。
『
ハングオーバー!』
シリーズや、『
デュー・デート』の
トッド・フィリップス監督作品等に起用されている作曲家。
最近では『
アナと雪の女王』で有名。
ダグ・リーマン監督作品なら!!!と、
ジョン・パウエルの起用を期待したけれど、今回は叶わなかったか~。
テイスト的には、クリストフで良かったと思うけどね!!
映画を盛り立てる、重みたっぷりの音楽だった!!!


サントラの視聴は→
コチラ。
あと、主題歌がものすごくよかった!!
John Newmanの『
Love Me Again』。
エンディングに流れるわけだけど、
この
映画のイメージとすっごく合う上、
映画の結末と、作品のデキ具合の感激を
さらに上げるようなアップテンポな選曲で、これも絶妙だ!!
長くなったけど、
最後、ケイジとリタのことを語って
終わりにするよ!!
公開終了間際に滑り込みで観に行ったけど、
本当に映画館へ観に行って良かった!!
本当に良かった!!間違いなく、ウマい作品なので観てほしい!!
冒頭でラブストーリーとは言ったけれど、
濃厚なアクションSFサスペンスっていう大枠の中で、
光り輝くラブストーリーがたまらんので、前言撤回しないよ!
少しでも共感や参考になりましたらポッチリ願います!


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! 以下ネタバレあり !何度も何度も
君を失って。君の終着点を知ってしまって。
次こそ未来を変えたくて。
君と同じ日を何度も生きることで、
誰よりも君が愛しくなる。
それでも、君と会うたび、
いつでも
「はじめまして」。
恋人が記憶を失くしてしまう、
ないしは記憶が蓄積できないといった
悲劇の恋愛映画はよくある。
それとはまた一線を画す。
リタにとっては、どんなに思いを寄せられても、
それに応えるだけの時間を経過していない。

でも、ケイジが自分に思いを寄せていることは
どうしたってわかってしまう。
ケイジは無理に関係を押しつけたりしない。
でも、リタへの思いは、語らずも抑えられない。彼女を見つめる瞳が、すべてを物語ってしまう。
リタを知り尽くしているからこそ、
彼女へ最善の接し方だってできてしまう。
だから、リタがケイジに恋することは、あまりに自然。
それでも状況が状況だけに、
2人が一緒にいられる時間は少ない。ケイジとリタは、戦いに勝利するためにどうすればいいか、
作戦を何度も何度も練る。

そしてケイジはそのたびに、
リタとは違った感情が大きくなる。
「彼女ともっと一緒にいたい」。何度も何度も彼女を失って、
2人の未来を手に入れることができない悲しみ。
その切なさが、ラブストーリーとして最高品質なのだ。
だからこそ、ラストシーンが素晴らしい。
戦いが終わって、
リタにもう一度会う。
「やっと、君との未来が始まる」。あの、ケイジの笑顔!ケイジの笑顔!!最高じゃないですか!!!

このラストに、脚本の上手さが濃縮されているよ!!!!
うああああああ
今すぐにでも
もう一度観たい!!!
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